かるかるブリック(カルセラ)開発秘話
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当社の一番人気、「かるかるブリック(カルセラ)」(軽量レンガ)は、今から15,6年前に誕生しました。
今では、たくさんのお客様にお使いいただいていますが、
商品として販売できるまでには長い道のりがありました。
【玉川窯業株式会社 専務取締役 中島 純二 】
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モザイクタイル発祥の地 岐阜県多治見市笠原町
玉川窯業株式会社のある岐阜県多治見市笠原町はモザイクタイルの発祥の地です。
昭和34年頃の笠原の風景。煙突が何本も見られる。
引用 : 笠原町史その三
美濃焼の産地でもあり、モザイクタイルの生産量は日本一を誇っています。
昭和初期には好景気の流れもあり、海外への輸出も盛んに行われていました。
ところが、バブルの崩壊、建築業界でのタイルの使用量の減少もあり、
タイル産業は厳しいものとなっていました。
大量生産ができるだけでは、メーカーの価値はありません。
もっとオリジナルのモノを、小ロットでもアイデアを絞れば何かできるはず…。
そんな状況の中、昔から抱いていた想い。
「レンガが作れないだろうか。」
でも、どんなレンガを作ればいいか分からず、レンガが使ってある建物を探し、隣の瀬戸市や尾張旭市を何度も巡っていました。
そこで、ある場所で見つけたレンガの外観のアパート。
近くにある他のアパートはガラガラで入居者がいない状態でしたが、そのレンガのアパートだけは満室。
レンガの持つ風合い、重厚感、アンティークな雰囲気に憧れる人は多いのだと驚きました。
「このレンガの風合いをタイルで出せないか。」
実は、初めてそのレンガ調のアパートを見た時には、それほど良いモノとは思っていませんでした。
色も形もバラバラで、大きさも不揃い。ところどころに、欠けや割れがある。
ですが、何度も足を運んで、じっくり見ているうちに、不思議と自分の意識が変わってきたように思います。
その時から試行錯誤が始まりました。
それが今から15年前の事です。
かるかるブリックの誕生
その当時、軽量土を使った、軽いタイルの開発をしていました。
サンプル用の軽量原料は、比重が1.4(水の比重が約1)でした。
軽量土を使ってタイルを大きくするために、膨張する原料を混ぜてみようと思い、
窯に入れて焼成したタイルを手に持つと、
「軽い!!」
驚くほど軽かったんです。
ひょっとしたら、水に浮くかもしれないと思い水に入れてみたら…。
「えええ〜っ!タイルが水に浮いた!」
これをなんとか商品化したい!
この時から軽量タイルの試験が始まりました。
「どうせ作るならインパクトのある水に浮くレンガを作ろう。」
昔、磁器タイルでレンガの風合いを出す試験で使用していた、二層成形のことを思い出し、
二層成形と軽量タイルを合体した軽量レンガができないだろうか…。
何度も何度も原料の調合を変えては焼いてみる、を繰り返しました。
そうして、ようやく思うような軽量レンガのサンプルができたのです。
ついにかるかるブリックの商品化へ
ここまでは手作りの段階で軽量レンガができましたが、あとはそれをどうやって生産工程に乗せるか。
レンガの風合いを持たせ、連続して二層成形するためには、金型にタイルの原料である粉末を充填するための「粉マス」に細工をする必要がありました。
何度も試験をして一年が経つ頃、ようやく量産工程に乗せることができましたが、
不具合が何度も発生して、その度に工程を修正して現在の生産工程ができました。
超軽量レンガ(かるかるブリック・カルセラ)の商品化です。
常識はずれの「かるかるブリック」は不良品?
ようやく商品化のメドが立った「かるかるブリック」ですが、タイル屋の常識からすると、すべて不良品です。
JIS(日本工業規格)で定められたには規格には一つも適合しないのです。
ホームセンターや、建築の展示会に出展したこともありましたが、
曲がったり、デコボコがあったり、厚さも不揃い。
そんな「かるかるブリック」を同業者が見て、
「このタイル曲がってる!大きさもバラバラ!」
と、バカにされた事もありました。
あのレンガのアパート見て感じた良さを、わかってもらえるはずだと確信していましたが、
誰もこの製品を取り扱ってくれず、仕方なく自分たちで売り始めることにしたのです。
かるかるブリック(カルセラ)開発秘話インタビューQ & A
Q. かるかるブリックが生まれたきっかけは?
ある時軽い原料が入って大きくする原料を混ぜて焼いて窯から出して、水に浮かしたら浮いたんですね。
我々窯焼きからしたら、タイルが水に浮くなんてことは考えもしなくて、 それが水に浮いたことがものすごく印象が強くて、これで何か作りたいと思って、以前から手がけていたレンガをこれから作っていったというのが、かるかるブリックの始まりです。
Q. なぜレンガ風なんですか?
昔からレンガが好きで、かるかるブリックができる10年くらい前ですかね、ちょっと違うレンガの試験をやったことがあり、それを思い出して、軽い原料とレンガを組み合わせた 試験をやっていって、今のレンガができたんです。
Q. はじめてタイルが水に浮くのを見てどう思いました?
すごいというか感動したというか、ひらめきっていうか、あ、これ、これだ!これでなんとかしたいっていう気持ちでしたね。
Q. 普段から商品開発には力をいれているんですか?
そうですね。以前から手作りでやったり色々試験をして、商品のある程度は自分で作ってきました。
Q. タイルはどのようにできるのですか?
タイル業界は分業制が進んでいて、原料屋から原料を買い、釉薬屋から釉薬を買って、我々タイルメーカーで成形して焼いていくという形でできています。
Q. 原料には独自の工夫があるのですか?
他のメーカーは原料屋から買ったままの原料に釉薬をかけて成形しますが、 うちのやり方は、原料も自分たちで調合します。
製造ラインもよそとは違った工程を作って、釉薬もオリジナルの調合で、工夫して製品を作り上げます。
Q. タイル業界は昔と比べて衰退していると聞きましたが
毎年毎年、生産量が減ってきて、使われる場所もだんだん減ってきていますが、最近はモザイクタイルが一般に浸透してきているので、モザイクタイルはまだ需要があるようですね。
Q. 「かるかるブリック」とはどんなものですか?
これがかるかるブリックのSサイズ、これがかるかるブリックのLサイズで、よく家の外壁などに貼ってもらっている、軽量のレンガです。
Q. どんなところに苦労されましたか?
なかなか思うようにいかなくて。
最初はテストピースでまず試験をして、だいたいこんなものが作りたいなぁと思って、何ヶ月もかかって作り、色合いなども決めてできてきたんですが、それはまだ手作りの段階なので、量産ができない。
となると軽量レンガはどこもやっていないからやり方が全く分からなくて悩んで、 すべて手作業でやるわけにもいかないし、製造ラインにのせなければいけない。
かといって、風合いは出さなければいけないのでいろいろ試行錯誤してこれやってダメ、あれやってダメ、いろいろ考えてある程度形ができてきて、色も生産ラインに合わせて作って、なんとか販売してきました。
Q. なぜそこまで手間をかけるのですか?
変わったものが作りたいというか、インパクトのあるものを作りたい。
どうせなら楽しいもののほうがいいとか、その辺も兼ねてちょっとよそと違う、 いろんな工程を少しずつ変え、変わったものを作るのがうちのやり方なのでそのようにしてきました。
Q. 「かるかるブリック」はどうやって使ったらいいですか?
一般的に多いのはビル、マンションの外壁に使われているんですけど、最近は戸建の住宅の外壁にも貼るようになったりしましたが、戸建の新築だとコストの問題があり、 リフォームやDIYなどに使っていただいています。
Q. 内装にも使えるそうですね
両面テープを貼って、家の中に貼るような形でも使っていただいてます。
Q. どんなところに使えますか?
ちょっとした角に貼るとか、最近は猫を飼っている方が多く、家の中の角を猫がひっかいてしまい、何度修理しても同じことをやってしまうので、そこに両面テープでうちのレンガを貼ると、 リフォームになり、猫のひっかき傷も隠せるというのでよく使っていただいてます。
Q. どんな風に両面テープを貼るんですか?
タイルの裏に両面テープを貼っていただいて、家の壁などに貼っていただければ。
Lサイズの方でも両面テープを貼っていただいて家の中に貼ったりとか、店舗のちょっとしたディスプレイの裏に貼ったりとかは、 プロがいなくてもその場でささっとやれるので両面テープはお客さんに好んでいただいてます。
Q. お客さんの反響はどうですか?
そこそこ反響をいただいて、ネット通販ですとかカタログ通販などでよく購入していただいてます。
簡単に貼れたとか、思っていたより良かったとか、いい話をいただいています。
Q. 素人の方でも使えるんですね?
そうですね。軽いから両面テープで貼れる、両面テープで貼れるなら誰にでも簡単に貼れるというイメージがあって。
普通タイルは、モルタルとか接着剤で施工になってしまうけど、 両面テープならごく普通の奥さんでも貼れるということで、よく貼っていただいてます。
Q. どんな人に使って欲しいですか?
キッチン周りとか、家の中でちょっと模様替えしたいとかっていうので、奥さんが気楽に簡単に貼れるような形で使っていただいてますし、 最近はLサイズも増えてきたので、お店のイメージチェンジとかによく使われています。
Q. どんな色のバリエーションがありますか?
Sサイズは7色あります。Lサイズは14色あります。
Sサイズ
Lサイズ
Q. かなり軽いんですね
普通のタイルは比重が2.4くらいですかね。
これが一般のタイルなんですけど、かるかるブリックは、比重が0.8か0.7くらいだと思うんですけど、非常に軽い。
これが水に浮いた最初のモノなんですけど、これだけ重さが違うタイルなんですね。
この表面にレンガを乗せたものがこうなってきたんです。
Q. その技術は他のメーカーにはありますか?
まずないと思いますね。ベースの方の生地と上のレンガと、違うものを組み合わせているし、それを連続成形でやってますので、その成形は特許も取ってますし、 うちの工程でしかできないと思いますね。
Q. 「かるかるブリック」はどこで買えますか?
カタログ通販と弊社のネット販売でも購入していただけます。
Q. どうやって検索したらいいですか?
ネット販売の名前は、「タイルショップたまがわ」と検索していただければうちのホームページが出ると思いますので。
Q. タイルを焼く窯はとても熱いですよね?
熱いですね。窯の中は1250度ですので非常に暑いですね。 暑くて大変です。
特に我々は岐阜県の多治見市という全国で1位になったくらいの非常に暑いところで、1250度の窯がありますので非常に暑いですけど、みんな頑張っていただいてます。
Q. 今後、商品のバリエーションは増えるでしょうか?
いま企画しているのは、もう少しかかりますけど、表面の風合いを変えて、焼きすぎレンガというものも検討したいと思っています。
Q. 最後に伝えたい事はありますか?
うちの窯で1250度で焼いたこれだけ軽いレンガはうちだけの商品ですので、 我々のこの気持ち、暑いところで作ってますので、この気持ちを思って使っていただければと思います。